貴方が上海に行ったら、きっとすぐにでも時代の流れを感じられる古い建物や美しい装飾品などを見つけることが出来るだろう。
しかし、その建物の全体を撮るため、少しでもレンズを空に向ければ、その時代感溢れる建物だけを撮ることの難しさを知ることになる。
貴方は、そこに近未来的なビルディングの数々と歴史観溢れる荘厳な建物の美しい調和を見つけることが出来るかもしれない。
しかしよくよく目を凝らせば、近未来的な建物の前を横切る、フェラーリやポルシェ、メルセデスなどの高級車の周りを取り囲むように併走している、ガムテープや針金などで無理矢理補修したような、おびただしい数の電動バイクの群れを見ることになる。
明と暗。
光と影。
世界中が超格差社会へと向かう流れを止めることが出来ずにいる昨今。
我々が向かう未来の一つがここにあるように感じた。
そんなコントラストの強い光景にあって、何故か私の目は暗部へと向かう性質なようだ。
それは、私が10代の頃によく遊んだ、大阪の天王寺に少し似ていたからなのかも知れない。
当時の天王寺(阿倍野)は、バラックと言っても差し支えがないような平屋の建物が密集する横に、(当時としては)大きな近鉄百貨店(現在はビルとしては日本一の高さを誇る、あべのハルカス)がそれらを睥睨するかのように建っていた。
そして、そこから少し歩くと通天閣に出る。
通天閣の周辺は、今でこそちょっと変わった観光地程度だが、当時は女子供だけで歩いてはいけないと言われるような街で、小学6年生で大阪市内に引っ越してきたばかりの私にはとても刺激的な街だった。
大道芸を遠巻きに見ながら、じゃんじゃん横町で串カツを食べ、ゲームセンターで遊んだ。
金もなく、暇を持てあますと、中学生までは無料で入れる天王寺動物園に行くこともあった。
そこでは、人々は決して裕福ではなかったが、皆大きな声でよく笑い、元気に逞しく生きていた。
その天王寺周辺に、上海の街はどことなく似ているのだ。
そしてそんな懐かしい想いを胸に、高層ビルを背にして数多ある路地の一本に入る。
見上げる先にはやはり、路地裏の長屋を威嚇するかのように高層ビルの群れが取り囲んでいた。
そこに微かな戦慄を覚えながら路地を進む。
――と、そこに――
目的の家屋はあった。
上海緊縛道場studioK
案内して貰わなければ通り過ぎてしまっていたことだろう。
シンプルで控えめなモノクロの看板が、小さな・・・だが決して譲れない自己主張のようなものを感じさせる。
そして、それもシンプルな鉄扉を開くと、そこには畳貼りの床と、木と竹で組まれた吊り床がある、The緊縛道場があった。
優しくて懐かしい光景。
人は少しシャイだが明るく親切で、食べ物は美味く、買い物にも困らない。
また一つ。
大好きな街が出来ました。
ダビデ氏
studioKを主催する“エセ”イタリア人(失礼。とてもシャイで、女とみれば誰彼構わず口説いたりしない、およそ”らしくない”けど、正真正銘イタリア人です)w
愛理さん
中・英・日の3カ国語を巧みに操り、ダビデと共にstudioKを切り盛りする、みんなの優しい(綺麗な)おねーさん。
LVENDAさん
私が上海に行くきっかけを作ってくれ、ショーまで企画してくれた若きオーガナイザーにして、とっても明るくいつも元気な可愛い女の子。
上記お三方には、渡航に関する待遇以外にも本当に沢山の時間と手間を掛けたおもてなしをいただき、並々ならぬお世話になりました。
ブログ上で大変失礼ながら、ここで改めてお礼を言わせてください。
本当にありがとうございました。
そして上記お三方以外にも、本当に多くの方々が私たちを歓待してくださり、何とお礼を言って良いか分からないほどです。
これは、去年行ったイタリア・フランスでもそうでした。
一昨年行ったスイスでもそうでした。
私は、海外から来てくれた友達に、こんなに多くの時間を割くことは出来ないと思います。
では、私は彼らに何をお返しすれば良いのでしょう?
一体何をお返し出来るんでしょう?
帰りの飛行機の中、ずっとそのことを考えていました。
今現在、未だ答えは出そうにありません。
ですが、せめてこの感謝の気持ちくらいは忘れずにいようと思います。
上海。
きっとまた・・・いつの日にか。
谢谢上海
谢谢studioK
堂山鉄心